
  
≪大 賞≫
株式会社マイトジェニック
「ミトコンドリア活性化による抗加齢ソリューション『マイトルビン』事業」
≪学会賞≫
株式会社TCNプライム
「加齢による大動脈弁狭窄症の新治療『DIVE』
 - ADLが低下し、治療を諦めていた患者様へ低侵襲で効果的な選択肢
≪ヘルスケアイノベーションチャレンジ賞≫
アイリス株式会社
「のど年齢AIによるアンチエイジングプラットフォーム」
≪ヘルスケアイノベーションチャレンジ賞≫
TIME TRAVELER株式会社
「老化抑制に資する革新的治療薬の開発」
≪ヘルスケアイノベーションチャレンジ賞≫
株式会社ライフクエスト
「がんサバイバーシップ支援プラットフォーム『Life Quest Resilience』」
総評:森下 竜一 日本抗加齢医学会理事長

今年度より審査委員長を務めております森下です。
まずは、受賞された皆さまに心よりお祝い申し上げます。
今回の審査は、例年以上に接戦で、非常に悩ましいものでした。その中で、「エビデンスデータの豊富さ」、そして「販売戦略の明確さ」といった点が高く評価され、今年度のヘルスケアベンチャー大賞は株式会社マイトジェニック社が授与されました。
特に本賞は「ヘルスケアイノベーション大賞」という位置づけでもあり、安全性に関わる社会的意義や実装可能性といった観点も重視しています。その意味でも、今回の受賞内容は非常にふさわしいものだったと感じています。
また、今回惜しくも受賞を逃した企業の皆さまも、今回の挑戦を糧として、さらなる社会実装やマネタイズ(事業化)に取り組み、企業としての発展につなげていただければ幸いです。
そして、今後大きく成長された暁には、ぜひ日本抗加齢協会の賛助会員として学会活動を支えていただけると大変ありがたく思います。
大賞
株式会社マイトジェニック / プレゼンター:谷若 慶人
 「ミトコンドリア活性化による抗加齢ソリューション『マイトルビン』事業」

 このたびは「第7回ヘルスケアベンチャー大賞」におきまして、大賞という栄えある賞を賜り誠にありがとうございました。運営に尽力された実行委員会・審査員の先生方をはじめ、関係者の皆さまに心より御礼申し上げます。
   当社マイトジェニックは、学習院大学理学部・柳茂教授の研究成果をもとに設立された大学発ベンチャーです。細胞内のエネルギー産生を担うミトコンドリアの機能低下が老化や疾患に関与することに着目し、「ミトコンドリア活性化」による健康寿命の延伸を目指しています。
   現在、ミトコンドリア活性化剤として新たに同定した植物由来成分「マイトルビン」の知見を応用し、サプリメントや入浴剤を開発・販売しています。また、その生理活性に基づく医薬品化についても前臨床段階で検討を進めており、研究成果の社会実装を通じた新しい抗加齢アプローチの実現を目指しています。
   今回、最終審査会に向けた実行委員の先生による事前メンタリングは、発表内容の整理にとどまらず、事業の方向性や社会的意義を問い直す貴重な時間となりました。まさに"事業メンタリング"と呼ぶにふさわしいもので、この機会を通じて自社の課題を客観的に見つめ直し、次の成長ステージへ進むための大きな気づきを得ることができました。
   当日のピッチでは緊張もあり、必ずしも思い通りの発表とは言えませんでしたが、それでも評価をいただけたことは、私たちの今後の取り組みに対してご期待を寄せていただけた結果だと感じております。来年の日本抗加齢医学会総会では講演の機会を頂戴できるとのことで、研究と事業の進展を改めてご報告できるよう、さらに努めてまいります。
   最後に、共同研究者の皆さま、起業当初より手厚い支援をいただいている学習院大学の皆さま、そして柳研究室のメンバーに心より感謝申し上げます。今回の受賞を新たな出発点に、学術と産業の架け橋として抗加齢医学の発展に貢献できるよう一層努力してまいります。
  
学会賞
株式会社TCNプライム / プレゼンター:小西 明英
「加齢による大動脈弁狭窄症の新治療『DIVE』- ADLが低下し、治療を諦めていた患者様へ低侵襲で効果的な選択肢

 この度はヘルスケアベンチャー大賞において「学会賞」を賜り、心より御礼申し上げます。
 私たち株式会社TCNプライムは、75歳以上の1割以上が罹患している大動脈弁狭窄症に向け新しい治療機器「DIVE」を開発します。DIVEは心電図の動きに合わせバルーンカテーテルを繰返し拡張し、狭くなった大動脈弁を安全に押し広げる機器です。従来、重度疾患には開胸手術か人工弁置換しか治療選択肢がなく、国内だけでも約20万人が適切な治療を受けられずにいると推定されていますが、私達が開発したDIVEによりこの空白を埋めることを目指します。
 DIVEは日本発のクラスIV医療機器です。開胸を伴わない短時間手術で、患者さんの弁を温存できるため身体負担が小さいことが大きな特徴です。効果としても重度から中等度へ狭窄を改善できる途中結果を得ています。これは、生活にかなり支障のある状態から、ほぼない状態まで改善することを意味します。世界でも今後高齢化による患者増大が懸念される中、DIVEがその解決に貢献できると考えています。医療機器開発において、日本は世界に大きく遅れをとっているため、このような新たな日本の技術・医療機器を世界に向けて発信していきたいと思います。
 審査会では、臨床での実装性や有用性、事業等に関する建設的なご意見をいただき、次の開発計画・資金調達等に直結する学びを得ました。今回の受賞を励みに、臨床での有用性の確認、品質・規制対応の着実な前進、供給体制の整備を進め、社会実装を加速してまいります。
 最後に、本賞の運営・審査に携わられた皆さま、日頃よりご支援くださる関係者の皆さまに深く感謝申し上げます。一日でも早く、現場で困っている患者様に、私たちの新しい治療機器「DIVE」を届けられるよう、真摯に取り組んでまいりますので、引き続きご指導・ご支援の程どうぞよろしくお願い申し上げます。
【ファイナリスト企業(五十音順 社名/内容)】
のど年齢AIによるアンチエイジングプラットフォーム
アイリス株式会社 加藤 浩晃(Hiroaki Kato)

 アイリス株式会社は、日本初のAI診断機器「nodoca」で培った100万枚超の咽頭画像データと解析技術を基盤に、「のど年齢AIによるアンチエイジングプラットフォーム」を提案します。専用カメラで撮影した喉画像をAI解析し、全身の老化度を可視化する世界初の技術で、生活習慣病リスクの早期発見や予防医療に新しい価値を提供します。さらに「のどPHRアプリ」と連動し、健診結果の管理や生活改善アドバイス、関連商品の購入までを一体化。非侵襲・即時判定・高精度という強みを活かし、健診機関や一般ユーザに広く展開可能です。既に国内で承認・保険収載されたAI医療機器の実績があり、医療現場での実績に裏打ちされた信頼を得ています。超高齢社会の課題に応える日本発の革新技術として、最終審査ではその可能性と社会実装への強い意志をお伝えしたいと考えております。
老化抑制に資する革新的治療薬の開発
TIME TRAVELER株式会社 林 寛敦(Tomoatsu Hayashi)

 当社は、東京大学定量生命科学研究所・秋山徹特任教授の長年の研究成果を基盤とする研究開発型スタートアップです。20年以上に及ぶ基礎研究により、老化・炎症・がん悪性化を引き起こす遺伝子を同定し、そのメカニズムを明らかにするために取り組んでいます。当該遺伝子の働きを阻害する抗体医薬に加えて、低分子化合物、核酸医薬を中心にパイプラインを構築し、未だ有効な治療薬のないサルコペニアやフレイル、がん悪液質、その他老化関連疾患に挑戦しています。当社の強みである世界的にも独自性の高い標的と東京大学発の知的財産、そして実装を見据えた開発体制により、大きな社会的インパクトを有するファーストインクラス創薬を実現し、健康長寿社会の実現に貢献していきます。
加齢による大動脈弁狭窄症の新治療『DIVE』- ADLが低下し、治療を諦めていた患者様へ低侵襲で効果的な選択肢
株式会社TCNプライム 小西 明英(Akihide Konishi)

 大動脈弁狭窄症は、心臓の出口にある大動脈弁が詰まる重篤な心疾患です。加齢に伴い重症化するので、国内はもとより世界でも今後患者数の急増が懸念されています。近年、人工弁への置換が標準的な根治治療法として普及していますが、患者さんによっては人工弁置換に体力的に耐えられず適切な治療法と言えない場合、あるいは実施施設へのアクセスが地理的に困難である場合も多く、それが大動脈弁狭窄症における適切な治療法がない空白領域を生んでいます。
 私たちが開発するDIVEは心電図に同期してバルーンカテーテルを拡張させ、狭まった大動脈弁を押し広げるという原理の医療機器です。患者さんの身体的な負担が小さいことが最大特徴で、更に手技が簡単で安全に実施できるため、従来の「治療の空白領域」を埋められる可能性を秘めています。
 DIVEを早期に実用化することで、一人でも多く、大動脈弁狭窄症で苦しむ患者様の命を救いたいと考えています。
ミトコンドリア活性化による抗加齢ソリューション『マイトルビン』事業
株式会社マイトジェニック 谷若 慶人(Keito TANIWAKA)

 株式会社マイトジェニックは、学習院大学の研究から生まれた新規ミトコンドリア活性化成分「マイトルビン」を基盤に、抗加齢ソリューション事業を展開しています。ミトコンドリアは細胞のエネルギー産生を担い、その機能低下は神経変性疾患、心疾患、フレイルなどの加齢性疾患のほか、毛髪や皮膚など外見の変化にも密に関わります。当社は、マイトルビンによるミトコンドリアの量的増加と質的改善を実証し、老齢マウスで心機能改善や寿命延伸を確認しました。クラウドファンディングでは累計4,200万円超を達成、サプリメントや入浴剤として製品化し、市場でも高評価を得ています。今後は機能性表示食品や化粧品への応用に加え、希少難病のミトコンドリア病への創薬展開も視野に入れています。最終審査会では、これまでの実績と事業展望とともに、未発表データを交えつつ、「ミトコンドリア活性化」という新たな健康軸の可能性を皆さまと共有したいと考えています。
がんサバイバーシップ支援プラットフォーム『Life Quest Resilience』
株式会社ライフクエスト 斎藤 糧三(RYOZO SAITO)

 個別化がんサバイバーシップ支援アプリ「Life Quest Resilience」は、当社の中核特許技術が心臓部です。科学的根拠のある生活習慣を一人ひとりに最適化し、「介入と効果測定」のループで予後とQOLの向上を証明します。
 まずはB2Cサブスクリプションモデルで事業を確立し、将来的にはB2Bデータライセンス事業で製薬・保険会社との協業を目指します。特許による参入障壁と、アプリで創出される独自のエビデンスを武器に、日本から世界へと展開します。
 この事業は、がん体験者に断片的な生活アドバイスしかできなかった過去との決別です。医師としての自分の、これまでの仕事を締めくくるプロジェクトであると考えています。



 
 
