実行委員会委員長
日本抗加齢医学会イノベーション委員会委員長 坪田 一男
皆様COVID-19の中お元気でお過ごしでしょうか?2017年に設立されからイノベーション委員会は活発に活動をしています。2019年に第1回のヘルスケアベンチャー大賞を主催して盛り上がりましたのはご存知の通りです。今回2020年はCOVID-19のため残念ながらオンサイトでの主催はできなかったのですが、ベンチャー大賞事務局の福田伸生さん、学会事務局の中村智子さんと委員会メンバーの方の強力なサポートのもと昨年よりも大きな応募を得て大きく盛り上がりましたので報告します。また委員会のメンバーも新しくなり(表1)、多様性のある委員会となってきました。
表1 日本抗加齢医学会イノベーション委員会名簿
日本抗加齢医学会イノベーション委員会
委員長
坪田 一男 (慶應義塾大学医学部眼科学教室教授)
委員
堀江 重郎(順天堂大学大学院医学研究科泌尿器外科学 教授)
森下 竜一(大阪大学大学院医学系研究科臨床遺伝子治療学 教授)
新村 健 (兵庫医科大学総合診療科 主任教授)
尾池 雄一(熊本大学大学院生命科学研究部・医学系総合医薬科学部門代謝・循環医学講座分子遺伝学分野 教授)
中神 啓徳(大阪大学大学院医学系研究科健康発達医学講座 教授)
佐野 元昭(慶應義塾大学循環器内科 准教授)
古家 大祐(金沢医科大学糖尿病・内分泌代謝内科 教授)
江幡 哲也(オールアバウト株式会社 代表取締役社長)
福田 伸生(バイオ・サイト・キャピタル株式会社 専務取締役)
藤井 勝博(株式会社ケアネット 代表取締役社長)
図1を見てほしい。日本坑加齢学会は2000年に設立されたがその時点での日本の医薬品の輸出入額の差異はまだそれほど大きくなく、まあちょっと輸入が多いねという程度であった。ところがその後2004年あたりより輸入が大きく増えて、現在では医療器具とあわせると3兆円以上の輸入超過になっている。実際アンチエイジング医療で使われている薬剤、サプリメント、医療器具なども海外製品が多いことにお気付きの先生も多いのではないだろうか。新しいサプリメント、あたらしい美容の機器やレーザー機器などなどたくさんの新しいアンチエイジングアプローチが行われているがほとんどが輸入業者による日本市場への導入であり、これでは我々は単に海外の会社のユーザーになってしまう。
病気を治すという医学の本流はもとより我々のアンチエイジング医学においても日本独自のイノベーションが必要だ。現在主要な大学や研究機関でアンチエイジングが真剣に取り上げられていない以上、我々日本坑加齢学会の研究者、メンバーがこの問題に真摯に取り組まなければいけない。イノベーション委員会はそのような危機感のもとになんとか良い道を作りたいと行動している。
図1医薬品輸出入額の推移
本学会副理事長の森下竜一先生らの努力によって、サプリメントなどの機能性表示システムができたことは、エビデンスのあるサプリメントを開発し世界に問うという観点からは画期的であった。ただシーズになるサイエンスを薬剤やサプリメントにまで発展させるシステムはまだまだ日本は貧弱と言わざるを得ない。アメリカではすでに1982年よりSBIR(Small Business Invention Research)というプログラムを走らせて大学の研究者をイノベーターにしたてて産業を興すことに成功している。すなわち毎年2000人以上の研究者に1000万円ほどのスタートアップを起こす資金を提供し、1年後に可能性があれば1億年を提供するというプログラムだ(https://www.sbir.gov/about)。これによりギリアドサイエンス、iROBOTなどの企業が生まれたと言われる。
日本でも1999年から日本版SBIRが存在したがうまく機能しなかったため政府はあらたに新日本版SBIR https://www.meti.go.jp/press/2020/10/20201002002/20201002002.html を開始することを閣議決定している。これから良いアイデアを起業を通してイノベーションにつなげる道はますます増えてくると思われ、本学会としてもそのような動きを後押ししたいと思っている。
このようなイノベーションの流れをなんとか学会にも起こしたいとヘルスケアベンチャー大賞は創設された。今回も第1回を上回る多数の応募があり昨年10月26日(月)にウェブ上で最終選考が行われた(表2)。今回は企業に対しては学会賞、個人に対してはアイデア賞を授与するという方針のもとに厳正な選考が行われた。最終選考に残ったチームはすべてすばらしかったが、大賞には合同会社アントラクトが「StA²BLEによる転倒リスク評価と機能回復訓練事業」選ばれた。学会賞には株式会社レストアビジョン「視覚再生遺伝子治療薬開発」、ヘルスケアイノベーション賞には株式会社OUI「Smart Eye Cameraを使用した白内障診断AIの開発」株式会社 Surfs Med変形性膝関節症に対する次世代インプラントの開発」歯っぴー株式会社「テクノロジーで普及を拡張させる口腔ケア事業」の3社が選ばれた。
最優秀アイデア賞には松本 成史 旭川医科大学
「メンズヘルス指標に有効な新規「勃起力」計測装置の開発」
が選ばれたが、まさに坑加齢学会の神髄のような“勃起力”をまじめにサイエンスする松本先生の講演には本当に感動した。チャンスがあったらぜひお聞きしてみてください。
各受賞者のコメントは別に掲載されていますのでご覧ください。
また審査の間行われた特別講演にはイノベーションの創造と拡大の方法」
というテーマで
医療法人社団鉄祐会理事長武藤 真祐先生が講演をしてくださり非常に勉強になった。
昨年は経産省の江崎先生の御講演だったがこのように毎年ホットなトピックの講演を聞くことができるのも本学会賞の大きな魅力と思う。
写真1 最終審査会ライブ配信の様子
今回COVID-19にも関わらず、オンラインにて第2回ヘルスケアベンチャー大賞を無事開催でき、報告できることをとても嬉しく思う。
最初から最後まで運営を行ってくれたバイオ・サイト・キャピタル株式会社 専務取締役の福田伸生さん、事務局の中村智子さんにはこの場を借りてあらためてお礼申し上げたい。またイノベーション委員会のメンバーの先生方にも予備審査から当日のご参加までたくさんにお時間をいただき感謝している。
個人的なことだが、この3月31日で慶應義塾大学医学部眼科教授を退任した。自分なりに一生懸命やってきたつもりだが、自分が教授に就任した2004年には図1にあるように医薬品の輸入問題は大きくはなっていなかった。それから17年間、輸入額は増えるばかりであり自分としてはこの問題になにもお役にたてなかったと心から残念に思っている。さらに悪いことにはちょっと前までこのような状況を自分自身も知らなかったことだ。気づいてみれば自分の使っている眼科顕微鏡、白内障手術器械、挿入する眼内レンズなどほとんどすべてが海外製品に置き換わっていた。薬剤も例外ではない。自分は研究者であり、患者様をケアする優等生医師だと思っていたら、なんと海外医薬品メーカー、医療器具メーカーの優等ユーザーになっていたのだ。
坑加齢医学の分野もこのままでは海外からの製品を使うだけのユーザー集団になってしまう可能性がある。やはりここは長寿の国日本としてなんとかがんばり日本独自のアンチエイジングアプローチを開発していきたい。そのためには製薬会社や医療器具メーカー、サプリメントメーカーにまかせきりではなく、我々会員自ら新しいアイデアを大切にしてイノベーションを起こしていけるような風土ができたらうれしいと思う。
第3回ヘルスケアベンチャー大賞を行いますので、ぜひ皆様からの応募をよろしくお願いします!
ヘルスケアベンチャー大賞事務局
バイオ・サイトキャピタル株式会社
福田 伸生
今回の最終選考会はCOVID-19と世界中が闘う中、新しい生活様式に即しオンラインでの開催となりましたが、私はその司会を務めさせていただきました。昨年の第1回では司会進行を森下竜一先生が務められ、その軽妙洒脱な語り口に会場の参加者が魅了されましたが、今回は観客も無くひたすらモニターに向けて語り掛けるだけと、私自身初めての経験でした。学会・協会事務局と企画・映像配信スタッフの皆さんの支えにより、なんとか終えることができ、改めて感謝申し上げます。
一方、第1回はアンチエイジングフェアの会場内に設けられた特設会場であったため、どのような方々が聴講して下さったのか分かりませんでしたが、今回は、オンライン配信に事前登録した方々の中に多くの投資家やベンチャーキャピタルの名前を見つけることができました。事業にとって大切なのは資金調達です。この大賞が果たす支援機能が拡充されたものと喜んでおります。
今回は前回を上回る36件の応募があり、レベルも確実に上がっていると感じられました。日本抗加齢医学会には医療従事者が多く所属されているので、COVID-19緊急事態宣言下での募集に一抹の不安がありましたが、多くの応募をいただきその不安は杞憂に終わりました。コンテストは、ほんの一握りの方々しか受賞できませんが、受賞者のコメントはそれぞれアンチエイジングで、日本を、世界をより良い方向へ変えていこうという気持ちがあふれていて、私たちに感動を与えてくれます。また、第1回の応募では惨敗したが、この1年ビジネスの側面を磨いて受賞したとのコメントもありました。落選しても1年後に成長した姿を見せていただけるよう、私たちも次の第3回を用意して皆さんからの再挑戦をお待ちいたします。
どんなに立派な研究成果も、イノベーションとして社会実装するためには、越えねばならないハードルがあるように思います。社会が抱えるどのような課題を解決するのか、それは多くの人々の共感を呼ぶものであるのかという必要性、別の言葉に置き換えると市場性は重要です。それと、ビジネスとして継続できることが重要です。せっかく製品化できても、市場に継続して届けることができなければ意味がありません。そのためには事業を継続するための組織とそれを維持するための収益が必要です。そして最後に、研究成果を事業に結実させるための情熱「パッション」が必要です。最終選考会へノミネートされるためには書類審査を経なければなりませんが、第1回に比べて第2回ではこの情熱の熱量が格段に上がったように思います。書類審査に携わっていただいた委員の皆様には、この膨大な熱量のこもった申請書を丁寧に査読いただきました。事務局を代表して厚く御礼申し上げます。
2021年も引き続きwith COVID-19の状況は続いていますが、アンチエイジングが開く明るい未来を信じて、今年も第3回ヘルスケアベンチャー大賞を開催予定です。私は研究者ではありませんが、坪田一男大会実行委員長をリーダーとする応援団の一員として皆様の研究成果が世に出ることを願っております。
引き続きヘルスケアベンチャー大賞へのご理解を賜り、皆様からの多くのご応募をお待ちいたします。
大賞(企業)
合同会社アントラクト 島 圭介
「StA²BLEによる転倒リスク評価と機能回復訓練事業」
この度は、第2回ヘルスケアベンチャー大賞への選出、誠にありがとうございます.非常に名誉な賞を頂戴し、心より光栄に存じます。
弊社は横浜国立大学発ベンチャーとして2019年に設立しました。これまで大学において転倒予防の研究を進める中で、高齢者が抱える「転倒事故のリスク」を正しく把握・検査する方法論が存在しないことをあらためて知りました。超高齢社会と呼ばれる日本において、健康寿命を延ばすため転倒予防の対策は急務であり、そのために転倒リスクの可視化は欠かせません。また高齢化する産業現場においても、作業者の転倒リスクの把握によって適材適所の人員配置や、労働災害の防止が期待できます。
我々が提案する「StA²BLE」は、わずか1分で自身が抱える転倒のリスク(立位年齢®)を把握できる極めて画期的な方法論であり、医療現場や高齢者福祉施設、産業現場、あるいは自治体が主催する健康診断に至るまで、様々なシーンで活用が可能な技術です。自身の転倒リスクを立位年齢®として知り、それぞれが有する転倒のリスクに合わせた身体機能維持の訓練(立位年齢®の若返り訓練)をする。そんな新しい形のアンチエイジングが提供できます。
これまでに企業内の健診、全国の展示会や健康まつりなどに参加して、データベースの拡充と広報活動を進めてまいりました。共同研究をしている先生方や学生達の協力によって、20代~80代までの約1、400人を超える計測データを収集できたことが、精度の高い転倒リスクの算出を可能とし、今回の受賞につながりました。今後もさらなる検査精度を確立のため、引き続きデータベースの拡充を進めるとともに、「立位年齢®で転倒リスクを知る」という考え方を広めていきたいと考えています。
今回の受賞でStA²BLEがアンチエイジングという視点で高いポテンシャルを持っていること、そして社会に大きなインパクトを与え得ることを強く再認識しました。立位年齢®が持つ可能性を広げ、あらゆる人が転倒リスクの検査と転倒予防法を享受できる、そんな社会の実現に、今後も挑戦し続けます。ヘルスケアベンチャー大賞の受賞で、医療関係者や高齢者の皆様がStA²BLEおよび立位年齢®に少しでも興味を持っていただけることを切に願っています。
学会賞(企業)
株式会社レストアビジョン 堅田 侑作
「視覚再生遺伝子治療薬開発」
この度は、栄えある第2回ヘルスケアベンチャー大賞学会賞に選出頂き、誠に有難うございます。
弊社は、名古屋工業大学と慶應義塾大学医学部眼科学教室の研究成果をもとに視覚予防再生遺伝子治療の創薬を通じて、失明の撲滅を目指しております。
私はもともと臨床医で、未だに治療法の確立しない失明難病の網膜色素変性症の患者さんの治療法を研究すべく大学院でこの遺伝子治療の研究を行っておりました。開発は製薬企業の仕事という固定観念で、起業するということは当時全く考えておりませんでした。ところが指導教授からこれは自分で起業して開発しないといけないということを説明され、実際に卒業後社長という立場で働いてみて初めて、近年画期的新薬を創出しているのはほとんどがベンチャーであること、ほとんどが米国発であること、バイオ・遺伝子治療の製薬技術・治験のノウハウが日本で育っていないことなどを体感し、これは何とかしないといけないと大きな危機感と使命感を感じて現在も活動を行っています。
実はヘルスケアベンチャー大賞に出場するのは2回目で前回は残念ながら惨敗してしまいました。今年こそはと思って、参加したところ、前回よりも出場者が多く、レベルも上がっており、これは今年も難しいかと思っていたところでの受賞だったのでとても嬉しいです。
私はもともと臨床医かつ研究者で、経営や開発に関しては素人からのスタートで、特にチャレンジを始めたばかりの昨年度は今から思うとビジネスとして上手く伝えられなかったと思いますが、前回のヘルスケアベンチャー大賞を通じて審査員・大会関係者や参加者の皆様からいただいたアドバイスでこの1年間成長してこられた結果が受賞に結び付いたのだと感じています。
有望なシーズを持ちながら、私のように自分で実用化するという選択肢が頭にない研究者の方々も多くいらっしゃるかと存じます。ぜひヘルスケアベンチャー大賞への応募を足掛かりに、起業もしくは事業の成長のチャンスを掴まれてはいかがでしょうか。
最優秀アイデア賞受賞(個人)
松本 成史 旭川医科大学教育研究推進センター 教授
「メンズヘルス指標に有効な新規「勃起力」計測装置の開発」
この度は第2回ヘルスケアベンチャー大賞選考会にて個人の部で最優秀アイデア賞賞に選出して頂きましたこと、心より御礼申し上げます。
高齢化社会の到来に伴い、加齢に伴う勃起不全(Erectile Dysfunction、以下ED)は増加傾向です。EDの発生と心血管イベント発生率は相関しており、ED診療ガイドラインでは、EDは心血管疾患の初発症状で、かつ心血管疾患のマーカーであるとされており、また高血圧治療ガイドラインでは、EDは50歳以上では加齢とともに増加し、高血圧自体がEDの頻度を高めるとされており、EDは男性の健康長寿の指標そのものとの考え方が認知されつつあります。
WHOは、EDを含めた男性医学「メンズヘルス」を男性の健康支援のために推進することを推奨しています。EDを客観的に簡易に評価出来る新規「勃起力」計測装置を開発することにより、アンチエイジングに資するメンズヘルス指標として重要で有効なツールになると考えます。
現在、EDの診断には、通常、夜間陰茎勃起現象の測定により行われ、代表的標準的診断装置であるRigiScan-PlusTM(以下RigiScan)を用いて他覚的所見を持って客観的診断することが理想でありますが、臨床現場ではPDE5阻害剤を代表とするED改善治療薬を内服し、その効果があるか否かだけで診断しているのが実態です。それは、RigiScanがセンサに繋がる2つのループを陰茎の先端部と根部に装着し、ループとセンサ入りの本体とは各々有線的に接続され、その本体は大腿部または腹部に固定して陰茎周囲長と硬度の変化を三連夜計測する装置であるために、患者にとっては「紐つき箱つき」の状態で非常に煩雑であり、また通常の生理的睡眠が担保されない状態での計測であることが背景にあります。これらが患者にとっては最大の問題点であり、RigiScanを用いた他覚的所見でEDの客観的診断が十分に出来ていないのが臨床現場の現状です。このためメンズヘルス指標として「勃起力」や「勃起度」の重要性が認知されても、ヘルスケアとして発展しにくいのが実際であると思われます。
これらの背景、問題点から、EDを客観的に簡易に評価出来る新規「勃起力」計測装置の開発が必要であり、かつ「紐つき箱つき」では無い、新規方式の無拘束で自己測定可能な時系列連続監視出来るウェアラブルデバイスの医療機器としての診断装置やその波及としてのヘルスケア商品が望まれています。
新たな計測原理・機序である「可変インダクタンス方式」を採用した新規「勃起力」計測装置の試作品を用いて、周囲径や硬度計測が出来ることを確認しました。
EDを客観的に簡易に評価出来る新規「勃起力」計測装置が実用化されれば、「勃起力」や「勃起度」の程度が可視化、定量化されることにより、アンチエイジングに資するメンズヘルス指標になるだけでなく、他覚的所見を持って客観的診断が可能になることで臨床研究等が発展し、高齢化社会におけるEDや性機能障害等の研究そのものを促進し、波及効果も大いに期待出来ると思います。
今回、最優秀アイデア賞に選出して頂き、またご支援を賜りましたことは、今後の研究開発、実用化に向けて大きな弾みとなります。この賞を頂いたことを励みにして、益々頑張っていきたいと思っております。
ヘルスケアイノベーションチャレンジ賞 (企業)
株式会社OUI 清水 英輔
「Smart Eye Cameraを使用した白内障診断AIの開発」
この度は、栄えある第2回ヘルスケアベンチャー大賞 ヘルスケアイノベーションチャレンジ賞受賞に選んで頂き、誠に有難うございます。
弊社は、現役眼科医が診療現場で感じた課題解決の為に、自ら発案・開発を行った、眼科診察ができるスマホアタッチメント型医療機器Smart Eye Camera(SEC)を発明・展開している、慶應義塾大学医学部発の大学ベンチャーです。(特許・医療機器届出も取得済。特許6627071/商標第6124317号/医療機器届出番号13B2X10198030101)。SECは、スマートホンのカメラと光源を利用し既存の細隙灯顕微鏡と同等の性能を発することができる医療機器です。現在、アジア・アフリカなどの途上国と日本それぞれにおいて、SECを活用した新しい眼科診療モデルの開発・実証に取り組んでいます。また、SECで取得した眼科的画像データを活用し、世界的に先進的な前眼部疾患の眼科診断AIの開発にも取り組んでいます。 これにより、世界の医師不足と医療機器不足を解決し、日本国内及び開発途上国・新興国における予防可能な失明と視力障害の根絶に寄与することを目指しております。
創業のきっかけは、創業者である清水・矢津・明田の3名がNPO Fight for visionの国際医療協力プロジェクトで訪れたベトナム農村部のクリニックでの経験です。現地には細隙灯顕微鏡等の高価・高性能な医療機器が存在せず、日本では当たり前に実施可能であった前眼部の診察がままならない状況でした。日本では手術を受けることで治療が可能な白内障等の疾患によって、失明にまで追い込まれている患者が多く存在しているという社会課題を発見し、この課題を何とか解決したいという思いが、SECの発明につながりました。
失明や視覚障害は人々の生活の質を大きく低下させ、医学的損失・経済的にも大きな損失を招きます。世界の視覚障害人口は22億人、失明人口は3、600万人と言われ、その半数が、白内障をはじめとする予防可能な疾患が原因といわれています。そして、適切な対策が取られない限り 失明人口は 3、600 万人(2017 年)から 1 億 1、500 万人(2050 年)へ増加すると予測されております。WHOは、視覚障害・失明の予防・促進をユニバーサル・ヘルス・カバレージ(UHC)達成のための核心的な課題と位置づけており掲げており、今後、更に重要性が増す世界的な課題です。
私たちは、2025年までに世界の失明人口を半分にすることをミッションに掲げております。
ヘルスケアベンチャー大賞の審査プロセスを通じ、審査員・関係者の方々から、多くの激励・応援のメッセージを頂けたこと、本当に心強く感じました。この素晴らしいイベントに参加できたことを心から感謝するとともに、今後とも多くの人たちにお力添えを頂きながら、ビジョンの実現に向けて邁進していきたいと思います。
ヘルスケアイノベーションチャレンジ賞 (企業)
歯っぴー株式会社 小山 昭則
「テクノロジーで普及を拡張させる口腔ケア事業」
この度は、第2回ヘルスケアイノベーションチャレンジ賞に選んで頂き、誠に有難うございます。
骨太の方針の中で、「口腔の健康は全身の健康にもつながる」という表現が2017年以降明記されています。しかし、ヘルスケアやアンチエイジングの中で「口腔の健康」を意識されている方は少なく、取り組む余地が大きいと考えています。
では、なぜ意識が低いかを追求していく中で、自覚症状が出にくいこと、及び専門的知識がないと分からないことであることにたどり着きました。歯っぴー社はAIなどのテクノロジーでこれらの問題点をサポートしています。既に、行政との共同研究、企業様との実証実験で、仮説と検証を繰り返しながら、リーンスタートアップでコストをかけずに最低限の製品・サービス・機能を持った試作品を短期間でつくり、顧客の反応を的確に取得して、顧客がより満足できる製品・サービス開発を進めています。
その活動の中で、偶然にこのコンテストを目にし、「アンチエイジング」、「日本発の医療」の2つのキーワードを目にした際に、このコンテストに挑戦する以外の選択肢はないと考え応募しました。光栄にも「ヘルスケアイノベーションチャレンジ賞」に選んで頂きました。まさに、歯っぴー社が取り組んでいる「口腔の健康は全身の健康にもつながる」という文言に対して、もっとチャレンジしなさいというメッセージが込められていると認識しています。
今回頂いた「ヘルスケアイノベーションチャレンジ賞」、及び「日本抗加齢協会認定スタートアップカンパニー」を機に、日本抗加齢協会認定のご支援を頂きながら、「アンチエイジング」はもちろんのこと、「日本発の医療技術」としてグローバル展開も視野に入れた準備を進めてまいります。
今回の「ヘルスケアイノベーションチャレンジ賞」、及び「日本抗加齢協会認定スタートアップカンパニー」を励みにして、今後も「アンチエイジング」、「日本発の医療技術」の推進に頑張ってまいります。引き続きご指導宜しくお願い致します。
ヘルスケアイノベーションチャレンジ賞 (企業)
株式会社Surfs Med 松﨑 時夫
「変形性膝関節症に対する次世代インプラントの開発」
弊社は東京大学のジャパンバイオデザインプログラム発のスタートアップ企業であり、共同創業者の早川と共に創業しました。私がこうしてヘルスケアベンチャー企業として起業に至った過程において、実は日本抗加齢医学会が大きなきっかけを与えてくださっていたので、この名誉ある賞は大変感慨深いものです。
遡ること2014年に私はアメリカ留学前に学会員として参加した日本抗加齢医学会で、現サイバーダイン株式会社の山海先生の講演を聞き、医療機器開発に目覚めました。アメリカ留学中に変形性ひざ関節症の遺伝子解析や装具開発を行い、再生医療などにも携わらせていただき、今の治療法への開発に繋がっております。変形性ひざ関節症は軟骨が加齢や外傷などに伴いすり減っていく病気であり、世界で2億人以上の方が痛みに苦しんでおります。治療法はリハビリや鎮痛剤などの保存的治療から手術では人工関節や、現在多くの企業が参加しているような再生医療が挙げられます。
人工関節の満足度は約80%であり、術後の屈曲角度の低下や大きな皮膚切開などの侵襲による疼痛が満足度低下の原因と考えられており、さらに人工関節置換術の手術数は年々増しているため、医療費増大も懸念されます。弊社のインプラントは低侵襲で回復が早く、安価で、骨を切らないために膝関節機能を温存できるような治療インプラントになります。弊社インプラントが変形性ひざ関節症の治療戦略において大きな選択肢となることを目標に開発していきます。我々はまだスタートしたばかりですので、ヘルスケアベンチャー大賞において次世代インプラントの開発を行っている事を広く認知していただきたい思いで応募させて頂きました。
今後は皆様の期待に応えられるようにインプラント開発をスピード感をもって行い、いち早く患者さんの元へ届けられるようにしていきたいと考えております。
アイデア賞受賞コメント(個人)
佐藤 拓己 東京工科大学・応用生物学部・教授
「寿司を食べながらケトン体を高く保つ方法」で認知能力を回復したい
この度は日本抗加齢学会において名誉ある賞をいただきありがとうございます。
私はケトン体を直接食べることを可能にするテクノロジーを目指しています。
本研究の今後の4つの目標を述べさせていただきます。
1. ケトン供与体で糖質制限なしにケトン体を増加させる
糖質制限は、インスリンスパイクの抑制を介して、ケトン体濃度の増加を誘導します。これに対して「ケトン供与体」はインスリンスパイクの影響を殆ど受けません。ケトン供与体は、消化管内で酵素により加水分解され、消化管内でケトン体を放出するからです。ケトン供与体には主にケトン体のナトリウム塩、ケトンエステルそしてポリヒドロキシ酪酸(PHB)があります。
2.ケトン供与体としてポリヒドロキシ酪酸(PHB)を利用する
PHBは、哺乳類、魚類及び節足動物の消化管内で酵素により加水分解され、消化管内でケトン体を放出することが知られています。PHBはある種のバクテリアの細胞質において顆粒状に蓄積されており、容易な操作で無味無臭の粉末にすることができます。
3.PHBは持続的にケトン体を増加させる
PHBはケトン体のポリエステルです。このエステル結合はエステラーゼ活性を持つ酵素によってゆっくりと加水分解され、ケトン体を消化管内で放出します。PHBは数時間かけてゆっくり増加し、持続的に高いケトン体濃度を維持します。PHBを用いることによって、持続的なケトン体濃度の増加が可能になります。
4.認知能力を回復させる
認知症は脳における糖尿病として理解できます。初期では、脳がインスリン依存的なブドウ糖の取り込みができないため、ニューロンがエネルギー不足に陥ります。この不足を解消するためには効果的なエネルギー基質が必要です。このときこそケトン体は、認知症を回復する効果を発揮できます。これには以下の生理学的な根拠があります。
1) ケトン体はブドウ糖と同様に脳血液関門をフリーに通過できる
2) ケトン体はニューロンのミトコンドリアに直接作用する
3) ケトン体はインスリンに依存せずにニューロンに取り込まれる
以上のことから、私はケトン供与体とりわけPHBを使って「寿司を食べながらケトン体を高く保つ方法」を提唱しようとしています。
アイデア賞受賞コメント
松本 佳津 愛知淑徳大学 創造表現学部教授
「長寿高齢社会を前提とした真に豊かな住空間をインテリアから考え、活用できる具体的な指標を作成する それは「豊かな人生」のデザイン」
この度は、とても光栄な機会をいただき、誠に有難うございました。
今まで同業に向けての講演は幾度とありましたが、このような状況は初めてでしたので、有り難いことだと感謝しております。
審査会は大変エキサイティングで、他の皆様の圧倒的な視点や取り組みに、大いに刺激やヒントをいただきました。また、オンラインのおかげで同業の知り合い、友人たちも応援のため試聴してくださいました。先録りやリハーサルの際、不慣れな私に細やかな心遣いもいただきました。関係者の皆様にも重ねて御礼を申し上げます。
また来年もぜひチャレンジしたいと思います。
今度こそ!もっともっと皆様にインテリアの重要性や可能性を感じていただけますよう精進いたします。
現在、長寿高齢社会のインテリアにおける150の有効事例を具体的に出しています。それにエビデンスをプラスし50程度にしぼりまとめていこうと思っています。また、認知症の方に有効な空間のデザインを日本の状況に合わせ活用できるようにしたいと思っています。カラー、特にコントラスト、反射率を踏まえ具体的に活用できる提案をテクノロジーの力も合わせ確立したいと思っています。それらには、業界を超えての連携が不可欠だと思っており、今回お声かけできたことは大きな一歩だと感じています。
インテリアは未来を良いものにする決定打です。ぜひご一緒に、より具体的なものへ共にアクションを起こす、イノベーションを起こしていければと思います。現在、名古屋工業大学大学院にも籍を置いており、こちらで論文にも書いていければと思っております。人生100年、今回の機会でまだまだ学びが多いとあらためて感じた次第です。
賞金は、オンライン留学にあてます!
ちょうど、海外での現地視察に行きたいと思っていたところがコロナ禍で叶わないのですがオンラインでのレクチャーがありました。どんな時にも打開策はあるものですよね!
これも今回のチャレンジからいただけたギフトだと思います。有効に生かしていこうと思います。
■第2回ヘルスケアベンチャー大賞 ファイナリスト(各分野 五十音順)